■慢性化している「引越し難民」問題
2018年頃から話題となり社会問題化している「引越難民」。
引越し難民問題とは、引越しの需要に対して引越しの供給が間に合わず「引っ越したいけれど引っ越しができない」という人が発生してしまうことを指します。
引越し会社側はドライバー人材の確保、生活者側はピークとなる3月から引越し時期をずらすことが対策として叫ばれています。しかし、大きな改善にいたるまでの対策ができていないのが現状です。

2019年の引越しシーズンを振り返ってみれば、ヤマトホームコンビニエンスの受注停止による引越し供給の減少、レオパレス問題による引越しの増加があり、2018年よりも深刻化したといえます。


■あらためて引越し難民の原因を探る
引越し難民には
・予約がいっぱいで、引越し会社に断られた
・見積もりが高額すぎて、引越しを諦めざるをえなかった
の2つがあります。

まず、「引越し会社に断られた」は、需要に対して引越し供給量が足りないことが原因です。
引越し供給量を増やすには、引越しスタッフやトラックを増やせればよいのですが、引越しスタッフ、主にドライバーは減少しています。理由は「労働人口減少」に加え「人気が低く、なり手が少ない」からです。
ドライバー不足の問題は今後まだまだ続く見通しです。
ネット通販での購入量の増加対応、スタッフの待遇改善、引越しスタッフの地位向上など、どれも短期に解決するのが難しい問題です。

もう一方の「見積りが高額」については以下の2つが原因と考えられます。
・年間の収支を引越シーズンの売上に大きく依存している引越し会社の経営
・金額が青天井とも言えるくらい上がっていく、引越し会社の見積もりの仕方
これは引越し会社の経営努力や営業慣習を変えれば改善できることです。


■引越し会社の収益構造と見積りを知る
売上から費用を差し引いたものが利益です。
費用には、売上がする「変動費」と売上にかかわらず一定かかる「固定費」があります。

引越しは人によって提供されるサービスです。引越し会社の費用の多くは「スタッフ」にかかるお金（労務費・人件費）です。

一方、グラフにあるように、引越しの需要は3月、4月（需要月）に集中します。

引越し会社は忙しい時期になればスタッフを増員・強化してこれに対応します。しかし、3月、4月以外の時期（平常月）は需要は落ち着き、需要月ほどのスタッフ数は必要なくなってしまいます。需要月の増員はアルバイト採用を中心に行いますが、一定の社員採用も行います。これが「固定費」となり平常月の収益を圧迫してしまうのです。
そこで、平常月の収支を支えるため、需要月に大きく稼ぐようになります。こうして需要月の金額は跳ね上がってしまいます。

ところで、引越しには「定価」がありません。
旅行代金のように、金額は時期に応じて大きく変化します。理由は時期によって需要に大きくばらつきがあるからです。
旅行代金と違うところは、時期ごとに確定料金が明示されないことです。この理由は、引越し条件が一件一件違うので、一律の料金を提示できないからです。
異なる引越し条件の料金を算出するため「見積り」が必須となります。見積りは電話や訪問などを通じて、人が行うのが一般的です。見積りは言い換えれば「営業」です。他社の見積り金額を上手に聞き出しながら、それをやや下回る形で料金を提示し顧客を獲得します。

このように引越し会社にとって
・いかに高く、いかに多くの引越し顧客を獲得するか
が重要であり
・定価がなく、他社比較という相対的な要素が強い
ため、金額が青天井に近い形で上がってしまうと考えられます。

費用を抑える経営努力は常に必要ですが、特に引越し会社においては平常月の収支を改善する工夫が必要です。
また、透明性のある料金提示で、引越しシーズン時も高額な見積もりで不信を抱かせてしまった引越者の信頼を取り戻す努力が求められます。
これは業界全体の課題とも言えます。


■2020年の引越シーズンはどうなるか!?
「これまでと変わらず引越し難民は発生する」と予測されます。
繰り返しになりますが、引越し難民問題に対して即効性のある対策は打てていません。
供給側では、ヤマトホームコンビニエンスが引越しを再開したという点でプラスですが、とはいっても2018年の状態に戻ったに過ぎません。

対策としてこれまで同様
・引越し時期をずらす
→3月、4月の予定を大幅にずらせるのが理想ですが、月末や週末の予定を少しずらすだけでも料金を抑えることができます
・早めに引越し予約をする
→予約が埋まってしまう前に予約する
をおすすめします。


■2020年 引越しシーズンの予約受付を開始します
アップルでは昨年よりもさらに早く2020年3月、4月の引越し予約の受付を開始しました。
まず、ネットで確定料金表示＆引越し予約ができる「ラクニコス」で、あらかじめ料金をチェックし、いつ頃から料金が上がるのかやどれくらい上がるのかの感覚を掴んでいただくことをおすすめします。

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